「試作のコストがかさむ」「納期が遅れる」「得意先からの信頼が下がる」──中小製造業にとって、試作の増加は経営に直結する大きな課題です。しかし、設計や開発の工夫次第で、試作を大幅に減らすことは可能です。
私は20年以上、自動車部品の設計・開発に携わってきました。その中で実感したのは、「試作を半分に減らすことは決して夢ではない」ということです。本記事では、試作削減がもたらす経営効果と、削減につながる具体的な工夫、中小企業でもすぐに取り組める実践ステップをご紹介します。
試作削減がもたらす経営効果
試作を減らすことは、単に開発コストを下げるだけではありません。経営全体に大きなメリットをもたらします。
- コスト削減: 材料費や工数の削減に直結する。
- 納期短縮: 試作回数が減ることで、リードタイムを短縮できる。
- 信頼向上: 得意先からの信頼が増し、要求仕様の背景を開示してもらいやすくなる。
特に「信頼向上」は大きな効果です。背景情報を共有してもらえることで、設計者側から代替案を提案できるようになり、より良い製品を効率的に生み出すことができます。
試作を減らすための設計上の工夫
冷却回路設計の最適化
冷却回路は複雑にすると圧力損失が増え、漏れのリスクも高まります。その結果、試作を重ねざるを得なくなります。ここで有効なのは「シンプル化」です。
回路をシンプルにすることで、小型化と圧力損失低減を両立。水漏れや流れの不具合を未然に防ぎ、試作回数を減らすことができます。
材料・構造の工夫
試作削減には、材料と構造の工夫も欠かせません。樹脂部品の例では、成形性・耐久性・コストを見極めるために初期段階から材料専門家と相談することが効果的です。
さらに、樹脂流動解析を行い、生産技術の専門家と連携することで、試作前に以下のような工夫を設計に盛り込めます。
- 肉厚の適正化
- 補強リブの追加
- 反り防止の設計
これらを織り込むことで、金型修正の回数を減らし、試作の手戻りを防ぐことが可能です。
早期CAE検証の活用
CAE(シミュレーション)は試作削減に欠かせないツールですが、「全てをCAEでやろう」とすると時間もコストもかかりすぎて逆効果になることがあります。
大切なのは、CAEを使うべき部分を見極めることです。効果的な流れは以下の通りです。
- まず机上計算で大まかな見当をつける。
- 机上計算で扱えない複雑な部分だけをCAEで解析する。
- 流動解析を活用し、金型修正回数を減らして短期間で設計出図する。
机上計算とCAEを組み合わせることで、効率的に試作を削減できます。
中小企業でも取り組めるステップ
「CAEを導入する予算がない」と悩む中小企業も少なくありません。しかし、小さな一歩から始めれば十分に成果を出せます。
おすすめは、まず机上計算の基礎教育を整備することです。さらに、Excelを使った簡易ツールを作り、誰でも同じ方法で計算できるようにします。
これにより属人化を防ぎ、社員同士で相互にチェックしあえる体制を作ることが可能です。中小企業でも手軽に実践できるこの基盤づくりが、試作削減の第一歩となります。
まとめと次のステップ
試作を半分に減らすことは、中小製造業にとって十分に実現可能な取り組みです。効果としては、コスト削減・納期短縮・信頼向上があり、設計段階での工夫(冷却回路、材料・構造、CAE活用)によって具体的に削減が可能です。
そして中小企業でも、机上計算と簡易ツールによる基盤づくりからスタートすれば成果を出せます。
「自社でも試作削減が実現できるのか?」と感じた方は、ぜひ無料相談(10分)をご利用ください。具体的な課題に合わせて改善の方向性をアドバイスいたします。


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